11階からの眺め(夜)
引っ越しやら仕事やらで忙しいので,ひとまず新居からのパノラマ写真でお茶を濁しておく.
11日(金),三鷹ネットワーク大学で星空案内人の集まりが開催され,そこで「星空散歩の実演」をやった.
三鷹の星空案内人(星のソムリエ)養成講座では,準ソムリエさんたちがソムリエさんになるためのテストの 1つに,お客様の前で実際に星空を案内するという「星空散歩」の実技試験がある.本来は本当の星空の下でやるべき試験なんだけど,いろいろな事情により三鷹では「室内でスクリーンに投影した星空をご案内」することになっている.で,今回,その見本を実演するようお願いされたというわけ.1月末にやったのと同じようなことだ.
1か月以上も前にお願いされていたのに,結局ネタ出しができたのが 2日前,時間配分を考えたのが 1日前,画像を集めたのが 2時間前.とはいえ,ツイッターでは「何て綱渡り♪」とか書いてたけど,一応それなりに,何とかなるだろうという思いはあった.「当夜 20時の空」というテーマは決まっているのだから,要は,そこに見えているものを話せばいいのだ.「20分という時間を守る」ことに尽きる,と言っても過言ではないと思う.あ,ウソを言わないとか丁寧に話すとかいうのは,当然ね.
で,当夜 20時の星図を見れば,金星を紹介して,火星とレグルスを話して,…というのは,外しようがない(外してもいいけど,見本にならない).たとえばそこから,金星や火星の話だけして 20分というのもアリだろうし,南に移って春の大三角というのもアリかもしれない.今回は,「広くいろんな天体を紹介しながら,『ペア』を意識してもらう」ということで,こんな話にしてみた.
(★)を付けたところが「いろんなペア」の例,裏テーマみたいなものね.時間もちゃんと守れたし,ま,少なくとも「悪くはなかった」ということで.
と本人は思ってますが,あれでよかったんですか?
2010年ゴールデンウィークのまとめ:
○28日(水)
夕方から代休.三鷹の小学校で観望会だったが,悪天候につき部屋でお話だけ,即興で土星の話題.「5分でいいから」と言われて始めてみれば 15分くらい話してしまった.
のち,西荻窪「奇聞屋」で毎月恒例「星めぐりの夕べ」.自然写真家 牛山さんのスライドトークショー.「すばる望遠鏡」見学ツアーのお話.よい連休のスタートです.音楽家の清田さんにも,久々にお会いできた.
○29日(木)
昼過ぎから六本木へ.Oさん Hさんと,今後予定しているイベントの打ち合わせなど.宇宙と植物のコラボレーション,見事なアイディアの融合,その発想はないわー.1か月後が楽しみだけど,僕もしっかり準備しなきゃ.
のち,六本木ヒルズで観望会…のはずだったが,強風のためスカイデッキ閉鎖.とてもよく晴れていただけにもったいない.Hさんは雨男だと言っていたが,実は風男なんじゃなかろうか.
○30日(金)~1日(土)
再び代休.相方と箱根へ旅行.テーマは「部屋に露天風呂があるところに泊まって入りたおす」.
行きはロマンスカーの最後部.目の前の窓から,景色がどんどん遠ざかっていく♪
箱根(箱根湯本)着.坂が多くて車も多くて道が狭くて,何とも歩きづらいところですなあ.部屋は 9階(最上階)で北向き.露天風呂からは,北極星やふたご座なんかがよく見えた.あと,料理多すぎた.ま,全部食べちゃうんですが(そして店の人に呆れられつつ喜ばれるんですが).
箱根で見た何やかんや.若いころにはやんちゃだったのかもしれない,どう見ても「猛犬」に見えない犬.
観光らしい観光はせず,せいぜいこの「玉簾(たまだれ)の瀧」に行ったくらい.部屋の露天風呂には夜 2回と朝 1回入ったので,目的は達成.
○2日(日)~4日(火)
連日,六本木ヒルズで観望会…のはずだったが,実施できたのは(僕が行ってない 1日と)2日だけだった.その 2日は,低空以外に雲もなく風も穏やかで,絶好の観望会日和.金星火星土星,冬のダイヤモンド,春の大三角,北極星に北斗七星,春の大曲線.都心でも,ちゃんと見える.先日買ったレーザーポインタも大活躍.Miさんにお会いしたのは,たぶん 2003年11月以来.
○5日(水)
この記事を書くのに四苦八苦.
以上,なかなか充実した連休だったのではないかと.
星のソムリエ Kさんにお招きいただき,Kさんの自宅天文台へお邪魔した.
Kさんのご自宅は,三鷹駅から徒歩 10分くらいの閑静な住宅街(まさにこの言葉で表現されるような場所)にある.2階建てで,屋上にドームがあり,そこに口径 40cmの望遠鏡が設置されている.とか書くと Kさん(と自宅)が特定されかねないが,まあ特定できる人はそもそも Kさんを(間接的にでも)知ってるはずなので気にしないことにする.ともかく,かねてよりお伺いしたかった天文台に行くことができて感激♪
当日(19日)はあいにくの空模様.一面が薄雲に覆われ,星は 1つも見えず,月齢 5のやや細い月もボンヤリとしか見えず,といった状態.しかーし,口径 40cmというのは肉眼の 3,000倍以上もの光を集めることができるのだ.コンピュータの画面で「これを導入」と指示すれば,惑星や恒星くらいは楽々見えてしまうのである.ちなみにお使いのソフトは「The Sky 6」だった.うん,仕方ないね….
まず最初の天体は「カストル」,え,最初にカストル? 何という通な選択.カストル(ふたご座の頭の星のうち,暗いほう)は 6重連星系である(6つの星でできている)というのは,知識としては知っているし,そのうちいくつかは望遠鏡でも分離する(目で見たら 1つだけど望遠鏡なら 2つ以上に見える)ということも知っているけど,実際にどんなふうに見えるのかは知らなかった.カストル分離,初体験.
おぉーっ,たしかに「2つ」に見える!(残り 4つは見えないが,それは想像で補う).実はもっと小さい望遠鏡でも見えるのかもしれないけど,とにかく「知識だけでなく実際に見たことがある」という経験を得たことが嬉しい.それに,繰り返すが,肉眼では星が見えないような空の下で,となると,これはもう 40cmの勝利としか言いようがない.
続いては「火星」.視直径 8″(満月のざっと 230分の1)とすっかり小さくなってしまっているが,ちゃんと「極冠(極地方の白い部分)」がわかる.さすがに極冠は見たことがあるけど,(しつこいようだが)「この空」で見えるのがすごい.
ドーム内から見える空は一部だ.だから,いつの間にか天候が回復してるかも? なんていう淡い期待は,次の天体「月」を見て打ち砕かれる.ドームのスリット(開いているところ)が月の方向になり…「やっぱりボンヤリだね」.肉眼では,輪郭がハッキリしない月である.ところがこれを,40cmの望遠鏡で見ると…「うわーい♪」クレーター内部の模様やしわ,山脈,海の濃淡など,今までに自分の目では見たことがないあれやこれやが目に入る.一緒に訪問していた方が「月の上を歩いているみたい」と表現したが,微動コントローラを使って月面のあちこちを眺めるのは,まさに擬似月面散歩をしている気分だ.
当夜は,雲は出ていたものの風は比較的穏やかだったので,倍率を上げてもじゅうぶん観望が楽しめ,300倍もの高倍率でも何ら問題なし.300倍の拡大ということは,距離を 300分の1に縮めるということでもあるから,「月面上空約 1,000kmからの見え方」はこんな感じなんだな,と想像もする.
そして最後に,真打ち「土星」の登場.細い環はもちろん,土星表面の縞模様もうっすらと見えた(ような気がする).何より驚いたのは,衛星タイタンもちゃんと見えたこと.雲越しに 8等級の天体が見えるなんて,信じられないけど,見えたものは仕方ない.そしてもう 1つ貴重な体験が,「800倍で土星観察」(ここまでの土星観察は 130倍).
焦点距離 4,000mmの望遠鏡に 5mmのアイピースをつければ,もちろん倍率は 800倍だ.だけど 800倍なんていうのは「計算したらそうなるけど,実際に使うことなんてありませんよ」という数字であって,実際 25年以上の天文歴のなかで 1度も体験したことがない数字.さて,どうなる?
…笑えた.さすがにボケボケで,「汁に浸かりすぎてふやけた,おでんの種(串に刺さった大根)」みたいになってた(わかりにくいな).「凛とした,気品ある土星」ではなく,「ボテッとした,だらしない土星」.とはいえ,「800倍」を体験し実感できたというのが,何よりも重要.この印象は忘れたくないものである.
観望会はここまで(後半もあったが略).その後の晩ご飯は,Kさん手作りのハッシュドビーフ.美味しいー! 2回おかわりした(すなわち 3皿いただいた).3重窓の防音設計,あらゆるところに床暖房,余裕のある空間デザインに品の良いインテリアと遊び心のあるアイテム(大量のスライムのぬいぐるみとか),そして屋上に天文台.ああ,何て贅沢で素敵な暮らし! 思わず「ここの家のお嫁さんになりたい」と言ってしまったよ(念のために,僕は(事実婚の)男であり,Kさんは既婚女性で旦那さんも天文ファン).
単に楽しいだけでなくいろんな経験ができた,(天気以外は)本当に素晴らしい夜でした.ありがとうございましたっ.
次回はぜひ,好天の日にお伺いして,球状星団や惑星状星雲や木星や,とにかく何やかんや,見たい!