40cmの望遠鏡で見た800倍の土星

Posted in 天文 on 2010-04-21 – 04:43
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星のソムリエ Kさんにお招きいただき,Kさんの自宅天文台へお邪魔した.

Kさんのご自宅は,三鷹駅から徒歩 10分くらいの閑静な住宅街(まさにこの言葉で表現されるような場所)にある.2階建てで,屋上にドームがあり,そこに口径 40cmの望遠鏡が設置されている.とか書くと Kさん(と自宅)が特定されかねないが,まあ特定できる人はそもそも Kさんを(間接的にでも)知ってるはずなので気にしないことにする.ともかく,かねてよりお伺いしたかった天文台に行くことができて感激♪

当日(19日)はあいにくの空模様.一面が薄雲に覆われ,星は 1つも見えず,月齢 5のやや細い月もボンヤリとしか見えず,といった状態.しかーし,口径 40cmというのは肉眼の 3,000倍以上もの光を集めることができるのだ.コンピュータの画面で「これを導入」と指示すれば,惑星や恒星くらいは楽々見えてしまうのである.ちなみにお使いのソフトは「The Sky 6」だった.うん,仕方ないね….

まず最初の天体は「カストル」,え,最初にカストル? 何という通な選択.カストル(ふたご座の頭の星のうち,暗いほう)は 6重連星系である(6つの星でできている)というのは,知識としては知っているし,そのうちいくつかは望遠鏡でも分離する(目で見たら 1つだけど望遠鏡なら 2つ以上に見える)ということも知っているけど,実際にどんなふうに見えるのかは知らなかった.カストル分離,初体験.

おぉーっ,たしかに「2つ」に見える!(残り 4つは見えないが,それは想像で補う).実はもっと小さい望遠鏡でも見えるのかもしれないけど,とにかく「知識だけでなく実際に見たことがある」という経験を得たことが嬉しい.それに,繰り返すが,肉眼では星が見えないような空の下で,となると,これはもう 40cmの勝利としか言いようがない.

続いては「火星」.視直径 8″(満月のざっと 230分の1)とすっかり小さくなってしまっているが,ちゃんと「極冠(極地方の白い部分)」がわかる.さすがに極冠は見たことがあるけど,(しつこいようだが)「この空」で見えるのがすごい.

ドーム内から見える空は一部だ.だから,いつの間にか天候が回復してるかも? なんていう淡い期待は,次の天体「月」を見て打ち砕かれる.ドームのスリット(開いているところ)が月の方向になり…「やっぱりボンヤリだね」.肉眼では,輪郭がハッキリしない月である.ところがこれを,40cmの望遠鏡で見ると…「うわーい♪」クレーター内部の模様やしわ,山脈,海の濃淡など,今までに自分の目では見たことがないあれやこれやが目に入る.一緒に訪問していた方が「月の上を歩いているみたい」と表現したが,微動コントローラを使って月面のあちこちを眺めるのは,まさに擬似月面散歩をしている気分だ.

当夜は,雲は出ていたものの風は比較的穏やかだったので,倍率を上げてもじゅうぶん観望が楽しめ,300倍もの高倍率でも何ら問題なし.300倍の拡大ということは,距離を 300分の1に縮めるということでもあるから,「月面上空約 1,000kmからの見え方」はこんな感じなんだな,と想像もする.

そして最後に,真打ち「土星」の登場.細い環はもちろん,土星表面の縞模様もうっすらと見えた(ような気がする).何より驚いたのは,衛星タイタンもちゃんと見えたこと.雲越しに 8等級の天体が見えるなんて,信じられないけど,見えたものは仕方ない.そしてもう 1つ貴重な体験が,「800倍で土星観察」(ここまでの土星観察は 130倍).

焦点距離 4,000mmの望遠鏡に 5mmのアイピースをつければ,もちろん倍率は 800倍だ.だけど 800倍なんていうのは「計算したらそうなるけど,実際に使うことなんてありませんよ」という数字であって,実際 25年以上の天文歴のなかで 1度も体験したことがない数字.さて,どうなる?

…笑えた.さすがにボケボケで,「汁に浸かりすぎてふやけた,おでんの種(串に刺さった大根)」みたいになってた(わかりにくいな).「凛とした,気品ある土星」ではなく,「ボテッとした,だらしない土星」.とはいえ,「800倍」を体験し実感できたというのが,何よりも重要.この印象は忘れたくないものである.

観望会はここまで(後半もあったが略).その後の晩ご飯は,Kさん手作りのハッシュドビーフ.美味しいー! 2回おかわりした(すなわち 3皿いただいた).3重窓の防音設計,あらゆるところに床暖房,余裕のある空間デザインに品の良いインテリアと遊び心のあるアイテム(大量のスライムのぬいぐるみとか),そして屋上に天文台.ああ,何て贅沢で素敵な暮らし! 思わず「ここの家のお嫁さんになりたい」と言ってしまったよ(念のために,僕は(事実婚の)男であり,Kさんは既婚女性で旦那さんも天文ファン).

単に楽しいだけでなくいろんな経験ができた,(天気以外は)本当に素晴らしい夜でした.ありがとうございましたっ.

次回はぜひ,好天の日にお伺いして,球状星団や惑星状星雲や木星や,とにかく何やかんや,見たい!

星座名でしりとりを

Posted in 天文 on 2010-03-25 – 00:35
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星座の名前でしりとりをすると,どれだけ続けられるでしょう?

ルール:

  • 清音と濁音,半濁音は区別する.つまり「コップ」→「ふたご」や「しし」→「じょうぎ」は不可
  • 「ぎょしゃ」→「や・やぎ・やまねこ」は可

約 15年前に同好会誌に掲載したクイズでは 18個続けたものを出題したのだが,今回あらためてプログラムで検証してみると 20個続くのが最長っぽい.

興味がある人はがんばってみてね.ただし,答がわかってもコメントには書かないでね.

星空案内人®(星のソムリエ®)資格認定制度シンポジウム

Posted in 天文 on 2010-03-23 – 20:20
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これまたずいぶん遅くなったけど,14,15日に開催された「星空案内人®(星のソムリエ®)資格認定制度シンポジウム」のレポート.

北は青森から南は沖縄まで,全国あちこちで開催されるようになったこの制度.その運営団体が集まって現状報告や情報交換,懇親会をしましょうという集まり.今年で 4回目の開催.僕は運営側ではなく「星のソムリエ」つまり「養成された側」としての参加だが,別に発表するでもなく,ただ聞いているだけ.各地の工夫や苦労話など,参考になるご意見もいろいろと.

運営側のマンパワー不足はどこも似たようなもので,その中でどうやって養成していくのか,とくに「準案内人→案内人」というパスをどうつないでいくかが,課題かな.養成された側としては,お手伝いできることはするとか,実際の活動で認知度アップや地域貢献を図るとか,そういう恩返しで.

シンポジウムの内容と直接関係ないところの感想はこんな感じ:

  • 今年も Srさん(Y大)と楽しくお話させていただきましたよん♪
  • Nさん(T台)が制作されたネタ動画が面白すぎ.どうにかして世に出したい
  • 二次会が焼き肉ってふざけてると思う.美味しくいただきました
  • 2日目の茶話会のケーキとバターサンドも美味しくいただきました

今年は初めて,ソムリエ自らの活動報告もあった.ソムリエさん同士の交流会も(一部では行われているらしいけど),いつかできるといいね.

星空案内人®(星のソムリエ®)についてはこちら → 星空案内人®資格認定制度について
で,今回のプログラムはこちら → 第4回 星空案内人(星のソムリエ)資格認定制度シンポジウム
バンビナさんのレポートはこちら → バンビナのこのごろ(2010-03-14)

六本木ヒルズで土星観察

Posted in イベント, 天文 on 2010-03-21 – 21:42
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ずいぶん遅くなったけど,12日に開かれた六本木天文クラブ観望会@東京シティビュー「スカイデッキ」(六本木ヒルズ森タワー屋上)のレポート.

天気が心配だったけど,雲は流れているので何とかなりそうな気配.たとえ雲があっても,六本木ヒルズという場所を考えれば,(どうせ暗い天体は見えないので)火星と土星さえ見えれば O.K..六本木駅を出て空を見上げると,高いところに火星の姿,よしよし,これなら大丈夫.

スカイデッキに 2台の望遠鏡と 1台の対空双眼鏡をセット.今夜の僕の担当は「望遠鏡(50倍)で土星」,客観的に言うと「ズルい」天体.土星は「見せてハズレることが滅多にない」天体なので「ズルい」のだ.とにかく「見えただけで感動される」天体,それが土星.多くの方が「キレイ!」とか「カワイイ!」とか感想を口にされ,僕の手柄でもなんでもないのに,とても幸せな気分になれた.

以下いろいろと.

  • 「見えた」という感動を味わってもらうことが一番なので,必要以上の説明はしない.説明を聞きたい方は,順番待ちの間か見終わったときに他のスタッフに対応してもらうということで.望遠鏡の前で時間をかけすぎると,待ち行列が長くなりすぎるしね.
  • 同様の理由で,タイタンも見えていたんだけど説明せず.人が少ない観望会なら,じっくり観察して見つけてもらうところだけど,全員がタイタンを探し始めると倍くらい時間がかかってしまう(しかも見えたところで大して感動されない).
  • それでも,「地球からこのくらい遠くにあるんですよ」とか,「地球の何倍大きいんですよ」といったことは,言うこともある.対話を拒否しているわけじゃないので,話しかけられたら丁寧にご対応.
  • 「もうちょっと大きく見えませんか」という質問(お願い)が何度か.「倍率を上げると大きくなるんだけど,風が強いので揺れも大きくなって見えにくくなるんですよ」と説明すると納得.
  • 雲に隠れている間は,「すみませんが,こればかりはどうにも…」とか,適当に小話.寒い中を待ってくださっているので,飽きさせないように.
  • 実際には,雲に隠れて肉眼ではまったく見えてなくても望遠鏡では土星が見えている(環もわかる)ので,「え? 何で見えるの?」という驚きもあり.
  • 笑っちゃうくらいファインダーがずれていたので(ネジが固くて調整不可能),セッティング時にズレの量を記憶.よくある話.
  • 当夜最初のお客様には英語で対応.とっさのときに言葉って出てこないなー.

来年度も楽しいこといろいろやるので,興味のある方はぜひ「六本木天文クラブ」のページをチェック.

海外でも星空ナビは使えます

Posted in 天文 on 2010-03-03 – 01:26
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星のソムリエのお仲間,Kさんから,メールをいただいた.豪華客船「飛鳥II」に星空案内人として乗り,船のデッキで南十字星をご案内するという,夢のようなお仕事(今回で 3回目かな)をされてきた方だ.見慣れない空でも「星空ナビ」があれば,すぐに方角と星座がわかって,とても便利だったとのこと.

私の星空案内・三種の神器 
「メガネ」「強力レーザーポインター」そして「星空ナビ」
…となりました。

押し売り(?)した甲斐があったというものである.

ところで,星空ナビの取扱説明書には「日本国内だけの販売および使用とし~」と書かれていて,「あれ? じゃ海外では使えないの?」という質問をされることがある.

使えるよ.

まず場所の設定.これは,リストや地図から場所を選ぶだけなので,とくに問題なし.偏角は考慮してくれている,はず.

続いて時刻の設定.これは,星空ナビを使う前に DS本体の時刻を「現地時間」にしておけば O.K..たとえばニュージーランド(日本との時差は通常 3時間)で使いたければ,DS本体の時間を「日本との時差」の 3時間分進めれば,ちゃんと「ニュージーランドの時刻で見た」空を表示する.別に「日本との時差が○時間だから」とか考えなくても,現地の時計が指す時刻に合わせればそれでよい.

海外で使う場合,一番問題となるのは,電源をどうするか.オススメは,PCの USBから DSにつないで充電できるアダプタを使うこと.もちろん,海外に(ノート)PCを持っていくこととその PCの ACアダプタが幅広い電圧に対応していることが条件だけど,最近のノート PCはたいてい大丈夫なはず.言うまでもなく,コンセントの形状を合わせるプラグも必要だけど,これはもう DSの話じゃなくて旅行用品の話.少なくともこれで「DSを使うためだけに変圧器を持っていく」なんてことはしなくてすむ.

実際にこういう方法(場所・時刻設定と電源使用)で,昨年 6~7月にニュージーランドで使ってきたけど,使用上は何の問題もなし.南天の星座を見つけるのに大いに活躍してくれた.

ついでに,海外使用とは直接関係がないけど,これもよく聞かれるので答えておくと,「星空ナビは,初代 DSからDSi LLまで,どの本体でも使用できますよ」.

最後にお約束として.

  • この記事に書かれていることは,僕が勤務する会社や所属する団体その他の公式の見解ではなく,したがって「こうやれば上手くいく」というお墨付きを与えるものでもありません.あくまでも「やってみたら上手くいったよ」という報告.なので,何か問題が起きても,会社や団体とは関係がありません
  • 同様に,「同じようにやったけど上手くいかないじゃないか」と僕に言われても,僕にもどうしようもありません.「僕はこうやれば使えたし,たぶん同じようにすれば使えると思うけど,保証も補償もしません」.あくまでも「自己の判断と責任で」
  • USB経由で PCと DSをつないで充電するアダプタは,(おそらく現時点では)任天堂公認のものはないはず.なのでこれを使うことも「自己の判断と責任で」
  • 星空ナビに使われている「方位センサーカード」が,政治的理由(たとえば軍事技術転用のおそれとか,知らんけど)などで海外持ち出し禁止だとしたら,さすがにそれは「自己の判断と責任」とは言えなくなるので,たとえ非公式であっても「使える」とは書かないようにする(=記事ごと抹消する)けど,そうでなければ,「自己(以下略)」

(あくまでも非公式に)どうぞ,海外でも使ってみてね!