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天文 on
2010-02-06 – 23:05
1週間前,1月30日の満月は,2010年に見える満月のうちで一番大きかったということだ.
その数日前に,ある原稿の中で違う日付を書いていた僕は,この事実を知って青ざめた.「え…30日…なの?」
月の見かけの大きさが変わるのは,
- 月の軌道が楕円なので,地球と月の距離が変わるから
- 地球が自転しているから
という理由による.2番目がちょっとわかりにくいかもしれないけど,「昇ってきたばかりの(または沈もうとしている)月よりも,空の高いところに見える月のほうが,およそ地球の半径の分だけ近いので,大きく見える」ということ.地平線に近い月は大きく見えるけど,それは錯覚.実際には空の高いところの月のほうが,近くて大きいのだ.まあ,とはいっても,望遠鏡で見たってわからないくらいの差にしかならないけど.
ともかく,間違いを直すために調べなおしてグラフを描いてみた.「満月(望)」というのは,天文学的に言えば「太陽と月がある座標系で正反対に来る『瞬間』」だ(満月の日というのは,その瞬間が含まれる日のこと).なので「その瞬間の大きさ」を比べてもいいのだが,一般的な感覚だと「大体丸く見えていたら満月」だろう.ということで,「ある程度以上光っている」という条件でグラフにしてみた.場所は東京,縦軸の単位は,角度の分.

グラフで,緑の線は「地平線上に月が出ていて,99.5%以上光っている状態」であること,赤の線は「地平線上に月が出ていて,95%以上光っている状態であること」を表す.こうしてみると,確かに,1月30日の満月が一番大きいようだ.
ところで,1月30日に満月になる瞬間は,15時17~18分ごろ(日本時間)で,このときにはまだ月が昇ってきていない.その後,17時12分ごろに昇ってくるが,先に書いたように,月が高くなるほうが大きく見えるようになる.一番大きく見えるのは,日が変わった 31日の 0時10分ごろ,ちょうど月が一番高くなったころになる.

「1月30日の満月」というよりは,「1月30日~31日に見える満月が一番大きい」ってことだ.
反対に,2010年で一番小さく見える満月は,8月25日.

これも,満月になる瞬間は 2時4~5分ごろ.地平線に近いところのほうが小さく見えるので,満月になる前に昇ってきた前日 24日の 17時51分ごろや,満月になった後に沈む 5時24分ごろの,「99.5%以上光っている丸い月」が一番小さいことになる.
なお,冒頭に書いた間違いの理由は,満月の「瞬間」の大きさで比べていたからだった.これだと,3月1日(1時38分ごろ)のほうが大きくなる.前述のように 1月30日の満月の瞬間は 15時18分ごろで,まだ昇っていない分,遠くて小さい(そもそも見えない)ということである.
関連していろいろ調べたので,だいぶ勉強になった,ような気がする.
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2010-01-31 – 23:27
26日(火),いつもお世話になっている Knさんからメールが来た.
「今度の金曜日(29日),三鷹の小学校で星空散歩(星空解説)やってくれませんか?」
「はいはい,いいですよー…って,え? 金曜?」
「星空準案内人(星の準ソムリエ)」として活動していらっしゃる方々に,「星空案内人(星のソムリエ)になるためのトークのテスト」の見本をお見せしたいとのこと.あくまでも参加者(児童と保護者たち)に話している風を装いながら,同時に星空準案内人の方々に向けたデモもやるということだ.教育実習みたいな感じ?
このテストは,実際の星空の下で実施するのではなく,室内でスクリーンに投影された当夜の星空を見ながら 20分のトークをやるという内容.純粋に「伝える技術」をテストするわけである.当然のことながら,星図を投影するソフトの機能に頼った派手な演出はダメだし,使える天体画像も 5枚まで.「星空解説のテストは,解説の技量を問うのであって,ソフトの操作技量を問うのではありません」.言葉はおかしいかもしれないが「ストイックな」星空解説.うーん,最近そういうのやってないなあ.いつも,ズームしたり絵を出したりアニメーションしたり.準備期間は短いし,お手本的な内容にしなきゃいけないし,なかなかハードですね….
さて当日.仕事を休みにして(自宅作業にして)ネタ出し,ストーリー作り,原稿書き.話し始めてしまえば 20分なんてあっという間で,準備しておいたネタの大半は話せないのだけど,準備の段階では,とりあえず思いついたことは何でも書いておいて,あとは流れを見ながらってことで.時間配分さえ間違わなければ,まあ何とかなるでしょう.
迎えた本番.ささやかな演出として,「星を瞬かせる」のと「流星を飛ばす」のは入れておいた.そのほうがリアル星空っぽいもんね.でもこれ,テストでやっていい演出なのかな? 内容は,極めてオーソドックスに「オリオン座」と「冬の大三角」と「火星」あたり.「テストの見本なので,できれば神話があるといいんですが」,あーはっは,準備では入れていたけど,時間がないから飛ばしたよ.
「20分のあとで,もう 10分,好きなことをやっていいですよ.ソムリエさんの本領を発揮してください」とボーナスタイムをもらっていたので,「地球と火星が接近する仕組み」をアニメーションで解説.こっちのほうが(前半 20分よりも)皆さんの反応がいいのは,そりゃまあ仕方がないことだ.動きがあるから,見てて面白いもんね.でもこの演出は,テストではできません.
何とか,無事に「2回 = 60分」話して終了.準備が慌ただしかったとはいえ,いい勉強になったし,楽しかった♪ 本人は楽しかったし,児童や保護者の方々も楽しんでいただいたと思うけど,ちゃんと「テストの見本」になっていたんだろうか,それが心配.